2023年度 第16期半固形製剤教育研修会【第5回】を開催いたしました
第16期半固形製剤教育研修会
製剤機械技術学会では,毎年若い技術者を対象とした剤形別の3つの教育研修会を実施して参りました。
COVID-19の流行を鑑みて2020~2022年度はWEB形式にて開催してきましたが,2023年度の実習を含む回に限り,従来通りに対面形式での開催となりました。
「半固形製剤設計と工業化研究 ー半固形製剤の製造技術と基礎知識ー」をメインテーマとし,幹事会社である弊社は半固形製剤技術の習得を希望する方(研修生17名)を対象に,対面形式による研修を担当いたしました。
- 1日目 9月26日(火) 講義(社外講師を含む)
- 2日目 9月27日(水) スケールアップ実習
ここでは,2日間にわたる研修の様子をご紹介いたします。
尚,研修中における写真撮影は一切禁止されていたため,ここでは補足資料を用いて紹介しています。
【講義】1日目 9月26日(火)
1日目は午後からの半日を使って講義がなされ,弊社とは別に社外より2名の講師をお招きしています。
集合場所が弊社テクニカルセンターとなっているので,弊社社員が研修生の道案内の手伝いをさせていただきました。
弊社は最寄駅から少し距離が離れていること,さらには昼の時間帯であったこともあり,徒歩での移動は暑かったのではないかと思います。
ご挨拶
製剤機械技術学会 教育委員会委員長/シオノギファーマ株式会社 谷野 忠嗣 先生
事務局による研修生の出欠確認が終わり,製剤機械技術学会 半固形製剤分科会委員長/エーザイ株式会社 後藤 則夫 先生の進行でスタートしました。
最初に,製剤機械技術学会 教育委員会委員長/シオノギファーマ株式会社 谷野 忠嗣 先生より開会の挨拶を頂戴いたしました。
本年度は,久しぶりの対面実施となり喜ばしいことを述べられました。
半固形製剤の製造は,実際に経験してみないとわからない点が多くあります。
研修生にはこれまでの研修を通して得られた知見を活かして,今回の実習に取り組んで頂くことを期待されていました。
みづほ工業株式会社 代表取締役社長 田中 啓史
続いて,幹事会社を代表して代表取締役社長 田中 啓史より歓迎の挨拶をさせて頂きました。
本研修は4年ぶりの対面実施となり,研修生を新しいテクニカルセンターにお招きできて喜ばしいことであります。
疑問点は担当する弊社社員に何なりと聞いていただき,研修生にとって実り多き研修となりますことを心から願って,歓迎の挨拶とさせて頂きました。
「半固形製剤向け外用剤容器と要求機能について」
大成化工株式会社 設計開発部 小川 幸弘 先生
医薬品包装容器として要求される仕様は長期にわたる製剤の安定性確保等,他の容器には見られない特徴を有しています。
また,環境負荷低減への取り組みも避けて通れない状況となっています。
本講義では,半固形製剤容器の特徴とその容器として使用頻度の高いアルミチューブとプラスチック製ジャー容器を中心に,要求機能と製品設計,製造方法,評価等について解説していただきました。
「半固形製剤工場におけるエンジニアリング」
千代田エクスワンエンジニアリング株式会社 ライフサイエンス部門 生産設備本部 吉野 麦 先生
半固形製剤の多くは乳化撹拌装置を用いて製造されますが,その導入には計画の段階から留意すべき点があります。
例えば,乳化撹拌装置の形状・バッチサイズ,充填工程への移送方法等,半固形製剤ならではの検討課題が散在しています。
本講義では,工場建設時に留意すべきポイントや,建設に際し実践すべきエンジニアリング手法を紹介していただきました。
「乳化現象と撹拌」「半固形製剤製造工程で使用する機械」「乳化撹拌装置のスケールアップ」
みづほ工業株式会社 技術開発部 榎本 康孝
上記テーマにて,約110分の講義を担当させていただきました。
講義のポイントは,「乳化を目的とした撹拌に対して,今日まで明らかになっている様々な知見をどのように活用すべきかを考える」ことでした。
ここでは,関連する3つのテーマを取り上げました。
難しいと思われる点であってもイメージできるように,絵や写真を多用して説明いたしました。
弊社のホームページコンテンツである「カクハンラボ」のページでも、乳化撹拌装置をめぐる基礎知識をわかりやすく紹介していますので,お時間のある時に是非ご覧ください。
【乳化現象と撹拌】
乳化についてはこれまでの講義で触れられることが多かったかもしれませんが,撹拌の立場から考えることをしました。
自由エネルギーの観点から乳化理論をできるだけイメージと例え話で説明するように努め,エマルションの調製メカニズムの中で撹拌が必要であることが明らかとなりました。
その後,他の撹拌機メーカーでは見られない,熱力学の考え方を取り入れた弊社独自の撹拌理論を展開いたしました。
普段の業務では意識することのない内容であり,初めて聞くような話が多かったのではないかと思います。
【半固形製剤製造工程で使用する機械】
休憩時間の雑談では,界面が存在することで様々な現象が引き起こされていること,その結果,考える要素が増えることをお話ししました。
続いて,先ほど紹介した撹拌の考え方が,実際の機械/装置に対してどのように応用されているかを確認しました。
そして,代表的な撹拌機の紹介の後に,半固形製剤製造における乳化撹拌装置の重要性について説明させていただきました。
乳化撹拌装置が優れている点や多くの分野で使用されている理由が,研修生に伝わったかと思います。
【乳化撹拌装置のスケールアップ】
最後に,ホモミキサーを使用したスケールアップ理論を紹介いたしました。
撹拌の考え方とホモミキサーの構造を踏まえ,弊社独自のスケールアップ理論を考えてみました。
スケールアップに必要な理論式だけをお伝えする機会が多い中で,背景にある考え方に触れていただきました。
応用的な話も多かったため,乳化撹拌装置やスケールアップに馴染みがない研修生にとっては,難しい内容であったかもしれません。
一日目の講義が終了した後は,弊社の食堂で交流会を開催しました。
簡単な立食方式でしたが,近隣の飲食店やスーパーマーケットで購入したお好み焼きや焼きそば等を用意しました。
コロナ禍の影響もあり研修生同士の接点が少なくなっている状況ではありますが,交流会を通じて同じ業界の中でつながりができたのではないかと思います。
翌日の業務の都合により,製剤機械技術学会 半固形製剤分科会委員長/エーザイ株式会社 後藤 則夫 先生とは一日目でお別れとなりました。
【実習】2日目 9月27日(水)
2日目は,午前から約一日を費やしたスケールアップ製造実習を実施しました。
テクニカルセンターが新設されてから,多くの研修生を招いた初めての実習となりました。
研修生の皆様には作業着に着替えていただき,弊社の乳化撹拌装置に触れていただきました。
「オリエンテーション&スケールアップ製造実習の説明」
みづほ工業株式会社 技術開発部 前田 直義
本日から実習を開始するにあたって,オリエンテーションを実施しました。
使用する乳化撹拌装置の仕様や機能について,各大きさの装置を比較しながら説明をしました。
その後のスケールアップ実習においては,3 L/250 L乳化装置を担当しました。
みづほ工業株式会社 技術開発部 藤井 遼一
続いて,実際のスケールアップ製造実習の内容を説明しました。
実習における一連の流れに加えて,実習で必要となる作業や注意点等を説明しました。
実習を通して,研修生が乳化撹拌装置へ積極的に触れていただくことも1つのテーマです。
その後のスケールアップ実習においては,3 L/25 L乳化装置を担当しました。
実習① 半固形製剤スケールアップ実習 3 L乳化撹拌装置
みづほ工業株式会社 技術開発部 藤井 遼一/前田 直義/鹿島 浩之
午前では,3つのグループに分かれて3 L乳化装置による実習を行いました。
普段の業務において乳化撹拌装置に携わる研修生が少ないこともあり,まずは体験してもらうことになりました。
実際の試作時では開発中の新型試験機も試していただくことができ,使い勝手が良いとの評価をいただきました。
各グループ共に実習は順調に進み,残った時間では実際の乳化撹拌装置を見ながらの質疑応答や,日々の業務に関する意見交換等をすることができました。
実習② 半固形製剤スケールアップ実習 25L/250 L乳化撹拌装置
みづほ工業株式会社 技術開発部 藤井 遼一/鹿島 浩之
午後からは,研修生の希望に沿う形で25Lと250 L乳化撹拌装置のグループに分かれて実習を行いました。
普段,大型の乳化撹拌装置に触れる機会がなかった研修生が多く参加されていたので,このような体験をすることができて喜んでいただきました。
例年であれば最後の冷却工程で打ち切りとなることが多かったのですが,今回の研修会では時間通りに終わることができました。
みづほ工業株式会社 技術開発部 前田 直義/鹿島 浩之
一方,250 L乳化装置の実習では,小さな乳化撹拌装置で経験のある研修生が多く参加されていました。
研修生にとって,このように大きなサイズの乳化撹拌装置は初めての経験となったようです。
弊社ではオプションとなりますが,ロードセルや流調弁の機能を知る機会を設けることができ,研修生に喜んでいただきました。
また,高圧洗浄や隣の装置で開発中の新規撹拌機構にも関心を持っていただきました。
みづほ工業株式会社 生産部長 兼 技術開発部 金田 基成
25L/250 L乳化装置における実習では,冷却工程で待ち時間が発生します。
そこで,この時間を利用して工場見学を実施しました。
タンクや掻取羽根を製造している様子に加えて,組立途中の大型の乳化撹拌装置もご覧いただきました。
夏が終わり9月末にはなりましたが,工場の中はまだまだ暑かったようです。
「測定データの読み方とスケールアップ評価」
みづほ工業株式会社 技術開発部 榎本 康孝
2日目の実習が終わった後に,総括として講演をさせていただきました。
弊社の乳化撹拌装置に触れていただくことを主目的にしておりましたが,実際の業務においてはスケールアップがテーマでもあります。
そこで,今回の実習を通して考察ができるように,実習の結果から考えるヒントを提供いたしました。
粒子径に関する考え方や各工程で再現性を確認する重要性を理解することで,スケールアップについて様々な視点から評価できるような視点を持ち合わせるきっかけとなりましたら幸いです。
「修了証授与」「閉会挨拶」
製剤機械技術学会 理事/(元)千代田化工建設 松本 治 先生
2023年度 第16期半固形製剤教育研修会は,第5回をもって最後となります。
松本 治 先生より,研修生一人一人に対して修了証が授与されました。
続いての閉会の挨拶では,研修生と弊社に対して労いのお言葉を頂戴いたしました。
また,研修生より弊社への感謝の意を込めて拍手を頂きました。
みづほ工業株式会社 常務取締役 九門 明
最後に,幹事会社を代表して常務取締役 九門 明より挨拶をさせて頂きました。
今回の研修を活かして業務に推進していただきたいこと,疑問点があれば何でも聞いていただきたいことを述べさせていただきました。
これをもって,本年度の半固形製剤教育研修会は滞りなく終了いたしました。
弊社から帰られる前に,研修生と学会・弊社関係者の皆様で写真撮影をしました。
研修においては写真撮影が禁止されていたため,これが唯一の写真となります。
後述する学会誌にて,このときの写真が掲載される予定です。
最後に…
4年ぶりの対面開催で負担が大きくなった面はありますが,やはり実地研修でしか得られない貴重な体験として研修生からも大変ご好評の声を頂戴しております。
現在アンケート集計中であり,研修生からの正式な評価は12月分科会の際に明らかとなります。
教育研修会は、医薬品製造に関わる基礎的な知識と試験機器、ならびに実際に現場で使用されている製造装置と同じレベルの装置を用いての実習による実践的な教育を行っております。
また、研修生の技術理解・習得とともに研修生同士の交流を促進し、企業の社員教育の一端を支援しております。
尚、研修生からの報告という形で、当社が関わった講義に関する記事が製剤機械技術学会誌に掲載される予定となっております。