📚 (5-15) スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【“N^3D^2”とは?】
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単位体積あたりの動力
「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【一般的な撹拌機によるスケールアップ計算式】」のページで,”N3D2”は何を意味するのか?という疑問を提示したまま終わりました。
ここではその答えを考えることになります。
いきなり結論から言うと,”N3D2”は単位体積あたりの動力を意味します。
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正味の所要動力Pnetとは…
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先に,正味の所要動力Pnetについて簡単に触れておきます。
単位体積あたりの動力PVは,正味の所要動力Pnet/製品仕込量Vで得られるためです。
正味の所要動力Pnetは,1秒間あたりの運動エネルギーのイメージです。
📝[memo] 1秒間で流体に付与する運動エネルギー=正味の所要動力として考えることができそうです。
次に,正味の所要動力Pnetの導出をしておきます。
1秒間に移動する円柱状流体の質量
m = Q・(N/60) = {π(D2/4)h・ρ}・(N/60) = π(D2/4)(αD)・ρ・(N/60) = (πα/4)ρ(N/60)D3
📝[memo] 「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【“ホモミキサー”による吐出量】」のページで紹介した考え方を採用します。
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周先端速度
v = U = πND/60 = π(N/60)D
1秒間あたりの運動エネルギー(正味の所要動力)
Pnet = (1/2)mv2 = (1/2)・{(πα/4)ρ(N/60)D3}・{π(N/60)D}2 = (π3α/8)ρ(N/60)3D5 = Npρ(N/60)3D5
📝[memo] π3α/8は定数であるので,まとめてNpに置き換えています。
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単位体積あたりの動力PVを決める因子
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単位体積あたりの動力PVがどのような式の形で表現できるか?を確認してみましょう。
PV = Pnet/V = Npρ(N/60)3D5/V
幾何学的相似により,V = αD3で表すことができるとします。
📝[memo] 体積は長さの3乗に比例するので,製品仕込量Vは羽根径Dの3乗に比例するとして,比例定数αを用いて表現しています。
PV = Npρ(N/60)3D5/αD3 = (Npρ/603α)(N3D2) ∝ N3D2
ここで,Npρ/603αはスケールアップ前後で変化しません。
すなわち,単位体積あたりの動力PVが”N3D2”に比例することがわかります。
混合を制御するための計算(推算)式
これまでの考え方をまとめ,“液体”+“液体”の一般的な撹拌(パドルミキサー)の場合の条件を式にすることを考えます。
📝[memo] 繰り返し同じ話をする部分がありますが,改めて紹介します。
幾何学的相似
「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【相似則の利用】」のページで紹介したように,基本的には”幾何学的相似”と”力学・運動学的相似”を考えます。
低速撹拌機は当社以外の撹拌機メーカーが得意とするところですが,基本的に幾何学的相似は満たされるように製作されています。
そこで,幾何学的相似を満たすような羽根径を決定するために,例えば下式を使用します。
📝[memo] ここでは,「撹拌槽径に対する羽根径の割合」という代用的な事例を紹介していますが,適宜,幾何学的相似を満たすようにパドルミキサーの構造を考えていきます。
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(条件①・②)単位体積あたりの動力を等しくする
上述した内容そのものです。
力学・運動学的相似に該当します。
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循環回数(=パス回数)または無次元混合時間を等しくする
1つの案は,「スケールアップ理論を考えてみようー乳化編【パス回数が等しくなるようにする】」のページで紹介したパス回数の考え方を採用して,撹拌時間を決定するものです。
📝[memo] 乳化ではないので,”循環回数”と名前を変えています。
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もう1つの案は,「スケールアップ理論を考えてみよう ー 乳化編【回転数・混合時間/乳化時間の考え方】」のページで紹介した無次元混合時間の考え方を採用して,撹拌時間(混合時間)を決定するものです。
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“単位体積あたりの動力一定”の一般式としての表し方
一般的に,「N2/N1 = (D2/D1)–2/3」と表されることがあります。
下図に記載されているような計算をすることによって,最終的にこのような結論が得られます。
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スケールアップ前
このときの回転数N1,タービン羽根の直径D1とすると,単位体積あたりの動力は「PV1 = (Npρ/603α)(N13D12)」となります。
スケールアップ後
このときの回転数N2,タービン羽根の直径D2とすると,単位体積あたりの動力は「PV2 = (Npρ/603α)(N23D22)」となります。
“単位体積あたりの動力一定”であるため,「PV2 = PV1」となります。
そして,式変形をしていくと「N2 = N1(D1/D2)2/3」となります。
回転数Nを左辺,タービン羽根の直径Dを右辺に移項すると「N2/N1 = (D2/D1)–2/3」が得られます。
📝[memo] PV2 = PV1 ⇔ (Npρ/603α)(N23D22) = (Npρ/603α)(N13D12) ⇔ N23D22 = N13D12 ⇔ N2 = N1(D1/D2)2/3 ⇔ N2/N1 = (D2/D1)–2/3
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