📚 (4-5) スケールアップでエマルションを評価しよう【スケールアップ成否の評価方法】
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
エマルションの使用性(考え方の例)
「スケールアップでエマルションを評価しよう【スケールアップの考え方】」のページにおいて,化粧品の4つの品質と言われる中で「安定性」と「使用性」がスケールアップ時に変化しやすいといった説明をさせていただきました。
これまで「安定性」について確認してきたので,ここでは代表的な「使用性」について簡単に触れたいと思います。
色・光沢
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例えば,ある固体表面上にエマルションが存在していると仮定します。
光がエマルションに照射されると,人間は色・光沢を感じ取ることができます。
このとき,乳化粒子の大きさが均一でないと様々な光の反射・散乱が引き起こされるため,製品に色むらがあるように感じることがあるかもしれません。
したがって,「色・光沢」に関する使用性の評価の1つとして,”粒子径・粒度分布”が候補となり得ます。
感触・延びの良さ
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次に,エマルションに触れることを考えます。
例えば,指でエマルションを動かしたりしてみます。
エマルションの粘度(レオロジー)によって,例えば製品を塗布したときの感触が異なることがあるかもしれません。
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エマルション中の液滴(乳化粒子)に触れると,この液滴は力を受けて変形します。
- 粘性体 形が変わって元に戻らないやわらかさ
- 弾性体 形が変わってもすぐに元に戻るやわらかさ
これらの性質に基づく液滴の変形によって,様々な感触が得られていると考えられます。
したがって,「感触・延びの良さ」に関する使用性の評価の1つとして,”粘度”が候補となり得ます。
一方で,液滴の変形のしやすさ(粘性・弾性)は,液滴の大きさによって異なることも考えられます。
そのため,少し強引ではありますが,乳化粒子の大きさによってエマルションの粘度が影響を受ける可能性があると言えます。
したがって,「感触・延びの良さ」に関する使用性の評価の1つとして,”粒子径・粒度分布”が候補となり得ます。
📝[memo] 「スケールアップでエマルションを評価しよう【測定値とその評価①】」のページでも説明しますが,必ずしもこのような考え方が当てはまるとは限りません。
📝[memo] 下記の引用は,乳化粒子の粒子径によって粘度が変化する事例の1つです。ご参考までに。
🚩 [引用:P. Sherman, Intern. Congr. Surface Activity II, 596, 1960]
スケールアップ成否の評価方法
ここまでの内容を整理すると,下図のように考えることができます。
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スケールアップ時における安定性に係る品質を評価するための手法として,”粒子径・粒度分布測定”や”粘度測定”が適しているのではないかと考察しました。
安定性に係る品質を評価するための手法についても,”粒子径・粒度分布測定”や”粘度測定”が適していると判断できそうです。
繰り返しになりますが,スケールアップの良否の判断基準を決めるまでの流れをまとめておきましょう。
- 研究室と工場とでは,当然ながら使用する撹拌装置が異なります。(小型の試験機≠大型の生産機)
- しかしながら,使用する撹拌装置が変わったとしても“機械的な力”を等しく与えることが重要でした。
- エマルション調製時においては”微細化作用”がメインに発揮され,微細化作用が等しくなることが求められます。
- “機械的な力”が等しいとき,安定性や使用性が変化せず等しくなることを確認しました。
- 評価方法として,”粒子径・粒度分布測定”や”粘度測定”が適しているのではないかと考察しました。
- その結果,サンプルの品質と製品の品質が等しくなると考えられます。(サンプルの品質=製品の品質)
- このとき,スケールアップ成功!と判断することができます。
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ここでは,”粘度”が”粒子径・粒度分布”に依存すると仮定します。
もし,各製品に応じた評価方法が決められていないのであれば,スケールアップの成否の判定は,粒子径および粒度分布の評価によって行うことができると考えることができます。
📝[memo] 1つの測定手法にまとめるような話の流れでしたが,”粒子径・粒度分布測定”と”粘度測定”等の複数の測定を併用することは何ら問題はありません。
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このように考えると,”品質”を”粒子径”に読み替えることができました。
そこで,スケールアップ前後で粒子径を等しくする!ことを主軸に考えていくことにします。