乳化撹拌装置を使用した製造例

「撹拌をやさしく捉えてみよう【一般的なクリーム・乳液製造工程で必要な撹拌】」のページで紹介した工程を想定して，乳化撹拌装置を使用して製品ができあがるまでの流れについて，写真で紹介していきたいと思います。

加熱・溶解工程 → 溶解槽の使用

油相や水相を調製するために，必要な原料を加熱・溶解する必要があります。

このとき，溶解槽と呼ばれるタンクを使用します。

📝[memo]　標準的な乳化撹拌装置に係る設備の場合，油相用・水相用の2種類の溶解槽が備え付けられています。

溶解槽の底には撹拌機に相当するパルセータ，温度計に相当する測温抵抗体が取り付けられています。

パルセータは家庭用洗濯機の羽根のような構造をしており，効率的に原料を加熱・溶解することができます。

乳化工程 → 乳化槽（ホモミキサー）の使用

溶解槽による油相および水相の調製後，乳化槽へ移送することになります。

📝[memo]　写真の事例では溶解槽と乳化槽とが同じ高さに設置されているため，乳化槽中を減圧し，圧力差を利用した油相および水相の投入（減圧吸引方式）をすることになります。

乳化槽に取り付けられているホモミキサーを使用して，乳化をしていくことになります。

乳化槽蓋には覗窓が取り付けられており，ここからホモミキサーによる乳化の様子を確認することができます。

このとき，真空ポンプを使って乳化槽内を減圧します。

乳化槽内が開放状態とならないように，バルブを切り替える必要があります。

添加剤の分散工程 → フィルターの使用

今回のモデルでは言及しませんでしたが，乳化後若しくは冷却途中に添加剤を投入することがあります。

このとき，乳化槽蓋に取り付けられているホッパーを使用します。

添加剤はホッパーからノズルを通って乳化槽へ到達しますが，液が飛び跳ねないように乳化槽壁面を伝って投入されます。

また，添加剤投入のライン中にフィルターを使用する場合もあります。

📝[memo]　溶解槽で調製した油相・水相を乳化槽へ移送する際，同様にしてフィルターを使用する場合があります。

冷却工程 → 乳化槽（掻取ミキサー）の使用

乳化工程が終わると，続いて冷却工程へと進みます。

ここでは，スクレパーという部品が取り付けられた掻取ミキサーを使用します。

スクレパーは，タンク壁面に付着した製品を掻き落とす役割を持っています。

その結果，タンク壁面における伝熱効率を向上させることができるため，掻取ミキサーには全面にスクレパーが取り付けられています。

📝[memo]　「スケールアップ理論を考えてみよう ー 冷却編【冷却時間の計算式②（生産性の計算式）】」のページでも，掻取ミキサーの働きについて紹介しています。

例えば，粘度が高いリキッドファンデーションのような製品であっても，掻取ミキサーを使用して効率的に冷却することができます。

充填工程（乳化物の取出し）

冷却工程が終わると，続いて製品を取り出すことになります。

製品を取り出す方法として，次の2つが挙げられます。

• 乳化槽の横転　👉　乳化槽を横転させることによって，乳化槽内の製品を取り出すことができます。
• バルブの使用　👉　乳化槽底に取り付けられているバルブを開き，乳化槽底から製品を取り出すことができます。

充填工程～箱詰め工程

乳化撹拌装置を使用した製造は以上となりますが，その後の工程についても写真で紹介していきたいと思います。

充填工程 → クリームの移送・容器とキャップの供給

最初に，製品を充填する準備をします。

ポンプ等を使用して，乳化槽から取り出した製品を充填機のホッパーと呼ばれる部分へと移送します。

📝[memo]　ここでは，製品がクリームであるとして見ていくことにします。

このとき，容器とキャップをターンテーブルと呼ばれる場所へ向きをそろえて置くようにします。

充填工程 → クリーム充填とキャップ取付

準備が整ったら，製品を充填していきます。

特に化粧品では，複雑な形状の容器が多く入口が狭い容器も少なくありません。

そのため，遠心力を利用して容器内部の広がった部分へ空間が残らないように充填するといった工夫がなされています。

続いて，キャッパーという装置で容器の蓋を閉めていきます。

これまで自動で充填する工程を見てきましたが，化粧品は少量多品種であるため，これに限られることはありません。

例えば，半自動の装置もよく使用されます。

充填後の工程

充填が終わると，適切な重量であるか否かのチェックを行います。

そして，ロット番号等を印字していきます。

最後に，箱詰め工程と進みます。

製品が大量生産であるとき，箱詰め機（カートニングマシン）を使用することがあります。

しかしながら，箱に傷が付きやすいため，自動化が難しいという問題点もあります。

また，化粧品は少量多品種であることから，自動ラインと手動ラインを併用する場合もあります。