Kakuhan Lab.

”かくはん”とは

📚 (3-2) 撹拌をやさしく捉えてみよう 【撹拌をどのように利用するべきか?】

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アイキャッチ 【撹拌をやさしく捉えてみよう】

“微細化作用”を引き起こす力

整理

撹拌について難しい話が続いたので,少し補足説明をしながら整理整頓をしておきましょう。

そして,このような撹拌をどのように活用すべきか考えてみましょう。

”撹拌作用”の1つとして微細化作用を説明しましたが,それを引き起こすために要する力については曖昧なままでした。

該当する力として,せん断力・キャビテーション力・衝撃力等が考えられますが,ここでは代表的な力である”せん断力”を中心に紹介します。

📝[memo] キャビテーション力・衝撃力については,少しだけ後述します。

せん断力

液体が1枚の板であると仮定して,それらが積み重なった”液層”があると想像してみてください。

そして,液層の一番下の板をゆっくりと,一番上の板を速く動かすと,液層が変形することが想像できるかと思います。

このように,速度の差によって変形が生じる力を”せん断力”と呼んでいます。

せん断力
🚩 せん断力

このせん断力がメインとなって,微細化作用が発揮されることになります。

したがって,当社で表現している微細化作用のことを直接せん断作用と呼ぶ場合が多くあります。

複数の力の組み合わせ

撹拌羽根は回転することが多いので,基本的には「回転数」を設定することになります。

このとき,回転数は撹拌羽根の速度を意味します。

そこで,撹拌羽根がある速度で動いたとき,流体に付与される微細化作用を下図のようにイメージしてみましょう。

複数の力の組み合わせ
🚩 複数の力の組み合わせ
せん断力
力こぶ

撹拌羽根がある速度で動いたとき,撹拌羽根に近い流体ほど早く動きます。

その結果,流体に速度差が生じるので,せん断力が付与されることになります。

キャビテーション力

水を加熱すると水蒸気となりますが,圧力を低下しても水は水蒸気となります。

そこで,撹拌羽根によって流体が動くことを考えると,瞬間的に圧力が低下するので流体の一部が気化することがあります。

このとき,急激に体積が膨張することによるキャビテーション力が働きます。

衝撃力

撹拌羽根が流体に衝突することによって働く力です。

流体の速度が0のときに,付与する衝撃力が最大となります。

複数の力の組み合わせによって撹拌機は“微細化作用”を発揮しますが,一般に,せん断力の占める割合は高いということになります。

”撹拌の考え方”の整理⑴

これまでに”撹拌目的”・”撹拌作用”・”力”について述べてきましたが,まとめると下表の通りになります。

ここまでの撹拌の考え方まとめ⑴
🚩 ここまでの撹拌の考え方まとめ⑴

撹拌の定義から始まって,達成できる”撹拌目的”を紹介しました。

それは2つあって,”濃度均一化”と”温度均一化”でした。

次に,”撹拌目的”である”濃度均一化”と”温度均一化”を達成するためには,”撹拌作用”を考える必要がありました。

これも2つあって,”吐出作用”と”微細化作用”でした。

ただし,”温度均一化”を目的とする場合は物質を細かくするという発想は必要ないため,基本的には”吐出作用”のみを使うことになります。

そして,”微細化作用”というのは曖昧な表現でしたが,メインとなる力として”せん断力”を紹介しました。

ここで,”濃度均一化”を目的とした撹拌を考えてみると,”吐出作用”または”微細化作用”が必要になります。

そのため,2つの撹拌作用をどのように使い分けるかがポイントになります。

📝[memo] 「撹拌をやさしく捉えてみよう【低速撹拌機と高速撹拌機】」のページで,”吐出作用”や”微細化作用”を主として発揮する具体的な撹拌機について説明いたします。

“液体A”+“液体B”の撹拌例

例えば,2つの液体を撹拌することを考えてみます。

ここで,2つの液体の相溶性に関して場合分けをすることにします。

“液体A”+“液体B”の撹拌例
🚩 “液体A”+“液体B”の撹拌例

“液体A”と“液体B”がお互いに混ざり合う場合(相溶性あり)

七五三

“液体A”や“液体B”を積極的に動かしてあげれば良いので,撹拌による吐出作用を使用することになります。

その結果,均一化された”液体C”が生成します。

我々はこのとき引き起こされた現象について,「溶解した」「希釈された」「反応した」のように表現しています。

“液体A”と“液体B”がお互いに混ざり合わない場合(相溶性なし)

いじめをする人

撹拌による吐出作用を使用して“液体A”や“液体B”を積極的に動かしたとしても,そもそもお互いに混ざり合わないので分離したままです。

したがって,通常,このような撹拌をすることはありません。

そこで,撹拌による微細化作用を使用することによって,乳化現象を引き起こすことができるようになります。


以上より,液体と液体の撹拌をする場合,相溶性や利用する撹拌作用によって,最終的に引き起こされる現象が異なることがわかります。

これは,使用する”撹拌作用”によって最終状態が異なることを意味しています。

アドバイスをする人

例えば,1つの容器の中に「液体A」と「固体B」が入っているとき,「固体B」を動かす必要がある工程では,撹拌による”吐出作用”を発揮すると良いことが直感的にわかります。

一方で,「固体B」を細かくする必要がある工程では,撹拌による”微細化作用”を発揮すると良いことが直感的にわかります。

しかしながら,撹拌を使用する工程は,このようなわかりやすい事例ばかりとは限りません。

それでは,”濃度均一化”を目的とした撹拌をするとき,どのような場合に”吐出作用”を使うのでしょうか?

また,どのような場合に”微細化作用”を使うのでしょうか?

これらの論点が,次のテーマになります。

2つの撹拌作用を使い分ける
🚩 2つの撹拌作用を使い分ける
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