📚 (3-1) 撹拌をやさしく捉えてみよう 【撹拌の考え方】
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”撹拌”を考えてみよう
ここから”撹拌”の話が始まります。
日常生活においても,知らず知らずのうちに意識することなく撹拌を使っているのではないでしょうか?
例えば料理を作ることを考えると,「具剤を混ぜる」=「撹拌する」という操作をしています。
習字をすることを考えると,硯で墨を磨ることによって「水と墨が徐々に混ざり合い」=「撹拌されて」墨汁ができあがります。
また,「合成樹脂と空気を混ぜる」=「撹拌する」ことで発泡スチロールが出来上がるという,少し特別な考え方もできるかもしれません。
ただ,「Introduction【全体イメージ】」のページでも紹介した通り,当社が取り扱っている撹拌機は世の中から見ると例外的なものです。
従来の撹拌の考え方を取り入れつつ,当社ならではの解釈も加えながら撹拌について紹介していきたいと思います。
“撹拌”とは…
撹拌について明確な定義はないそうですが…,
“撹拌”とは,一般に比較的低粘度の液体を媒体とする流体に対し,撹拌羽根によって機械的に流動を与え,様々な目的を達成させるための操作であると考えられています。
例えば,コーヒーとミルクを撹拌するという操作があります。
撹拌によって,写真のような状態を作り出すことができるということですね。
定義の中に「様々な目的を達成させるための操作」とありました。
それでは,撹拌によってどのような目的を達成することができるのでしょうか?
撹拌の定義では,その対象が「比較的低粘度の液体を媒体とする流体」に限られていました。
この「かくはんについて」のコンテンツでは,これ以外のモノも撹拌として捉え説明していきます。
撹拌によって達成できる目的(撹拌目的)
撹拌によって達成できる目的を”撹拌目的”と呼ぶことにします。
この”撹拌目的”は,大きく2つに分けて考えることができます。
① 濃度均一化
全体の濃度を等しくしたいという目的に対し,撹拌を使うと良いということになります。
例えば,「液体A」と「液体B」の2種類の液体を1つの容器の中に入れたとき,さらに撹拌をすることによって全体の濃度を均一にすることができます。
これらが「液体A」と「固体B」,「固体A」と「固体B」であっても同様に全体の濃度を均一にすることができます。
難しい文献では,このような操作を「(1) 混合操作・(2) 分散操作・(3) 物質移動操作・(4) 反応操作」のように分類して紹介されています。
ここではそこまで深く踏み込まずに,全てをまとめて”濃度均一化”と表現することにします。
② 温度均一化
全体の温度を等しくしたいという目的に対し,撹拌を使うと良いということになります。
例えば,1つの容器の中に「液体A」が入っているとき,撹拌をすることによって全体の温度を均一にすることができます。
これらが「固体B」,溶媒に何らかの溶質が溶けた「溶液」であっても同様に全体の温度を均一にすることができます。
難しい文献では,このような操作を「(1) 混合操作・(5) 伝熱操作(加熱・冷却)」のように分類して紹介されています。
ここではそこまで深く踏み込まずに,全てをまとめて”温度均一化”と表現することにします。
撹拌によって生じる作用(撹拌作用)
”撹拌目的”は,濃度均一化と温度均一化の2つがあることを確認しました。
それでは,上述した目的に対し撹拌を使うとき,撹拌が持っているどのような能力を活用すべきか考えてみたいと思います。
このような能力を”撹拌作用”と呼ぶことにします。
この”撹拌作用”も,大きく2つに分けて考えることができます。
① 吐出作用
撹拌をすることによって,物質を動かすことができます。
例えば,1つの容器の中に「液体A」と「固体B」が入っているとき,撹拌による吐出作用を発揮することによって「固体B」を動かすことができます。
最終的には,「固体B」同士の位置関係を変えるような流動を引き起こす撹拌が必要になります。
その結果,”濃度均一化”という目的を達成することができます。
1つの容器の中に「高温の液体」と「低温の液体」が入っているときも同様です。
撹拌による吐出作用を発揮することによって「高温の液体」または「低温の液体」を動かすことができます。
その結果,”温度均一化”という目的を達成することができます。
② 微細化作用
撹拌をすることによって,物質を細かくすることができます。
例えば,1つの容器の中に「液体A」と「固体B」が入っているとき,撹拌による吐出作用を発揮することによって「固体B」を細かくすることができます。
最終的には,「固体B」同士の位置関係を変えるような流動を引き起こす撹拌が必要になります。
その結果,”濃度均一化”という目的を達成することができます。
ここで留意しておきたいことは,”吐出作用”と”微細化作用”に撹拌作用をハッキリと分けることはできないことです。
すなわち,”吐出作用”のみを発揮する撹拌をすることはできず,少なからず”微細化作用”が含まれます。
今後は,”吐出作用”を使うであったり”微細化作用”を使うというような表現で説明をすることがありますが,それぞれの撹拌作用を単独で使うような撹拌をするという意味ではありません。
あくまでも,”吐出作用”または”微細化作用”がメインとなるように,その撹拌作用が大きくなるような撹拌をすることであると理解してください。
「撹拌をやさしく捉えてみよう【撹拌作用の使い分け】」のページでも説明しますが,吐出作用:微細化作用=100:0のようなことはできないということです。