📚 (2-5) 撹拌の立場から乳化をイメージしよう 【ギブス自由エネルギーのイメージ①】
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”ギブス自由エネルギー”を考えてみよう⑴
「撹拌の立場から乳化をイメージしよう【界面自由エネルギーの考え方】」のページでは界面自由エネルギーの考え方を紹介してきましたが,もう少しだけ踏み込んでおきたいと思います。
簡単な背景
エネルギーの話が出てきましたが,厳密には”ギブス自由エネルギー”です。
この”ギブス自由エネルギー”とは何でしょうか?
”ギブス自由エネルギー”を取り扱うと,どんな良いことあるのでしょうか?
時代背景としては産業革命の頃,ニコラ・レオナール・サディ・カルノーという人が蒸気機関の熱効率を向上させるためにはどうしたら良いかを考えました。
📝[memo] カルノーサイクルという熱機関として知られています。
その後,ウィリアム・トムソンやルドルフ・クラウジウスによって熱力学第二法則(エントロピー)が生み出され,エネルギーの移動の方向が決まっていること,エネルギーは様々な種類があるけれど質があることを明らかにしました。
そして,ヘルマン・フォン・ヘルムホルツによって自由エネルギーの概念が提唱されました。
📝[memo] 特に,等温等圧過程の自由エネルギーはギブズ自由エネルギーと呼ばれます。
この辺りの難しい話は専門書へ譲るとして,”ギブス自由エネルギー”のイメージを掴むことを考えてみたいと思います。
📝[memo] メインである「かくはんとは」のコンテンツからは少し逸れてしまいますが,知っておくと理解が深まります。
ギブス自由エネルギーの絶対値・変化量
ギブス自由エネルギーの絶対値
例えば,あるエネルギーが300であったとします。
しかしながら,300という具体的な数値を聞いたとしても,どのように解釈すべきかよくわかりません。
このように考えると,エネルギーの絶対値を言われたとしても,その意味を見出すことは難しいと言えます。
📝[memo] 自然現象によってエネルギーの絶対値が異なるため,一般化して議論するのは避けた方が良さそうです。
ギブス自由エネルギーの変化量
エネルギーの変化量は,「変化前のエネルギーの絶対値」と「変化後のエネルギーの絶対値」の差から調べることができます。
このとき,エネルギーの変化量が具体的に-200であると聞いたとしても,-200という値をどのように解釈すべきかよくわかりません。
ただし,エネルギーがどうなったか?(増えた/減った/変化なし)を知ることはできます。
📝[memo] エネルギーは自然に増えることはないので,基本的には(減った/変化なし)の2つを考えることになります。
📝[memo] エネルギーの具体的な変化量についても,一般化して議論するのは避けた方が良さそうです。
そこで,エネルギーがどうなったか?(減った/変化なし)という視点から,エネルギーが意味するところを考えていきたいと思います。
仕事をすると体力を消費する
エネルギーという言葉は,何だかわかったようなわからないような曖昧な表現であると思います。
ここでは,”ギブス自由エネルギー”について,会社で働いている様子になぞらえて考えてみたいと思います。
労働の立場から考えてみる
状態1
ある日の朝,社員であるゼロカマさんが出社しました。
元気いっぱいで,彼女の体力が10あったとします。
👉 10 − 2 = 8
状態2
午前中に,ゼロカマさんは「仕事A」をしました。
その結果,体力を2だけ消費したので,ゼロカマさんの体力は8になりました。
👉 8 − 3 = 5
状態3
午後になって,ゼロカマさんは「仕事B」をしました。
その結果,体力を3だけ消費したので,ゼロカマさんの体力は5になりました。
このように考えていくと,仕事をするにつれてゼロカマさんの体力はだんだんと減っていくので,体力の変化量は負(-)になることがわかります。
…ということは,少し変な表現となりますが,次のように理解することができます。
将来,ゼロカマさんの体力が減っていくことが明らかであれば,ゼロカマさんは外部に対して何らかの仕事(化学変化)をして,自らは元気な状態から疲れた状態へ変化(状態変化)します。
自然現象の立場から考えてみる
続いて,ゼロカマさんが働いている様子を「ギブス自由エネルギー」になぞらえて,自然現象について考えてみたいと思います。
自然現象が引き起こされる範囲を特定したいので,系(周囲の環境とは切り離して考えた部分空間)という概念を導入します。
ここで,「ゼロカマさん=系」「体力=ギブス自由エネルギー」に置き換えることにします。
状態1
系がギブス自由エネルギーを10だけ持っていたとします。
状態2
最初に,系は「仕事A」をしました。
その結果,ギブス自由エネルギーを2だけ消費して系のエネルギーは8になりました。
状態3
次に,系は「仕事B」をしました。
その結果,ギブス自由エネルギーを3だけ消費して系のエネルギーは5になりました。
このように考えると,系のギブス自由エネルギーはだんだんと減っていくので,その変化量は負(-)になります。
…ということは,少し変な表現となりますが次のように理解することができます。
将来,系のギブス自由エネルギーが減っていくことが明らかであれば,系は外部に対して何らかの仕事(化学変化)をして,別の状態へと変化(状態変化)します。
ここで,”ギブス自由エネルギー”に関するイメージをまとめておきましょう。
- 将来,ゼロカマさんの”体力が減っていく”のであれば,ゼロカマさんは”仕事をする”。
- その結果,ゼロカマさんは元気な状態から疲れた状態へと変化する。
ゼロカマさんの体力を調べた結果,ゼロカマさんの”体力が減っていく”のであれば,ゼロカマさんは元気な状態から疲れた状態へと変化することがわかりますね。
そして,これらのイメージを”ギブス自由エネルギー”として少し厳密に表現し直すと,次のように言うことができます。
等温等圧条件下では,系のギブス自由エネルギーは自発的に減少(ギブス自由エネルギー変化は負)する。
👉 ギブス自由エネルギー変化が負であれば,その自然現象は自発的に進行(状態変化)することがわかる。
すなわち,様々な自然現象が自発的に引き起こされるか否かを”ギブス自由エネルギー”(の変化量)から評価できるようになります。
非常に抽象的な話が続くので,ここでは感覚として捉えるようにしましょう。
「撹拌の立場から乳化をイメージしよう【ギブス自由エネルギーと乳化現象①】」のページで,具体的な”ギブス自由エネルギー”による評価方法を紹介させていただきます。